日常生活の出来事の中で残っている記憶や印象は人それぞれ。
例えば、
・テーマパークで遊んだ記憶や印象
・行列ができる店で食べた記憶や印象
・映画を観た時の記憶や印象
・彼氏彼女とのデートの記憶や印象
・著名人の講座を受けた時の記憶や印象
実際は苦痛の割合が多かったはずの出来事が、時が経過するにつれ甘美な記憶、楽しく充実した記憶や印象になってしまう。
このような経験をした人は少なくないだろう。
これはなぜなのか?
2002年にノーベル経済学賞を受賞した、心理学者・行動経済学者の「ダニエル・カーネマン」が提唱した「ピーク・エンドの法則」というものがある。
これは「人の記憶や印象の良し悪しは、その出来事の中で最も”高ぶった時”(ピーク)と”クライマックス”(エンド)だけで決定づけられる」というもの。
ある実験では、
まず1番目のグループに大音量の不快な騒音を聞かせた。
そして2番目のグループにも同様の騒音を少し長めに聞かせた。
最後に少しマシな騒音を流し実験を終えた。
その後、どちらのグループがより不快に感じたかを評価してもらったところ、2番目のグループの方が、1番目のグループよりも不快に感じなかったのだ。
この実験が仮に2時間だったとしよう。しかし、ほんの数分でも気持ちが高揚したり、終わり際の印象が良いものであれば、その出来事全体の印象としては「良くなる」ということを実証している。
冒頭の例で言えば、
★寒くて凍えそうな中、2時間も並び、やっとのことで噂のラーメンを食べることができた。
感動! 初めて味わう美味しさ!
しかし食べる時間としてはほんの10分。
帰り際、店員さんが「また来てくださいね」とにっこり微笑んでくれた。
後日、ラーメン食べるなら「またあの店に行きたいなあ」と思えた。
★睡眠不足の中、会社の命令である講演を聞きに行った。
概ね話の内容が単調でつまらなく、眠りにつきそうだったが、登壇者の最後のある一言にグッと気持ちが引き寄せられた。
後日、この講演を友人にも勧めたり、この登壇者の著書も購入した。
★彼氏との初デート。
車で移動の道中、ほとんど会話がなく、もう帰りたいと思っていた。
デートの内容は「蕎麦打ち体験」。お互い失敗ばかりで、なかなかスムーズにいかないながらも何とか完成した蕎麦だったが、とても美味しかった。
帰りの車でも、相変わらず会話が少なかったが帰り際、彼氏から「一緒に作るとあんなに楽しいものなんだね」と言われた。
この一言で、また一緒にデートしたいと思えた。
以上のように、この法則は日常の様々な場面で応用が利く。
全体の時間を「全力疾走」は疲れる。
「ピークとエンド」だけに力を注げば、相手に対して良い印象となり、それが記憶として残る。
また「ほとんど手応えがなく、このままだと何の成果も得られない!」と思っても、その出来事には最後の最後まで巻き返しをはかれるチャンスがあるということを忘れてはならない。
まさにポジティブシンキングである。
何かこれって、人生にも同じことが言えるのかも。